『短歌書いたん会』の総評 僕が好きだった授業がありました。それは中学校2年生の時の国語の授業でした。小川先生という三十代前半の男性(当時独身)先生の授業でした。小川先生の国語の授業では正解も不正解もありませんでした。みんなで教科書の文章を読んだ後、小川先生が「さて筆者の考えは?」とか「主人公は何故こう考えたんでしょう?」と問題を出してくれます。そこからはみんなが「ハイ!ハイ!」って挙手して、各々の考えを発言します。そしてその発言を小川先生は「なるほどねぇ」といちいち納得して、丁寧に黒板に書いてくれました。或る子が、本文の中に一文字も登場してきていないような主人公の母親を出してきて「昨夜にお母さんが亡くなったから、こうなった」っていう意見を出しました。それはもう読解力などではなく想像力の世界でした。「それはさすがになしだろう」と思っていたんですが、小川先生は「あり得るね」と言って黒板に『前日にお母さんを亡くしていたから』と書いたんです。みんなはそれをノートにとりました。先生はどの生徒のどんな意見も否定せず、全てを授業に反映させてくれました。それだけに、みんな必死になって教科書を読みましたし、人の意見をどういう事か理解し考えようとしました。僕は小川先生の国語の授業がとても楽しみでした。思えば、今ある僕の頭の基盤はこの国語の授業によって皺を刻まれたのだと思います。将来、こんな授業を僕もできたらいいなぁと淡い夢も抱きました。 僕がホームページを持たせてもらった時から、ずっとやってみたいと思っていた事はこの国語の授業でした。ホームページのリニューアルに伴い何か新しいコンテンツの企画を考えようとなった時、あの自由な教室を再現してみたいなぁと思ったんです。そこで唄種を考え、真っ先に『短歌書いたん会』を思い付いたんです。当初は難しい事かなぁなんて不安もあったんですが、いざ開催してみると皆さん素晴らしい唄を投稿して下さって、不肖山口は感服しっ放しでした。また、会が進んで投稿数が増してくるに連れて、そのレベルも高くなって来て、正直なところ僕の下手糞な講評でタネーを出すなんて申し訳ないなぁとも思うほどでした。まぁ、そこは主催者のエゴという事で、よしなに目をつむって楽しんで下さい。 今回の『短歌書いたん会』の投稿総数は72首で、50タネー出ました。この72首というのは僕の予想を上回るもので、大変驚きました。あと28首で百人一首が出来上がるところでした。また機会を見て『短歌書いたん会』を第二回、三回と重ねて唄種・今近材和歌集なんて銘打って編纂できたら、また更に面白いなぁなんて夢は広がるばかりです。今回獲得されたタネーは、これから発表するボーナスタネーも含めて、ここからの唄種にもコンテニューされていくので、20タネー、花の種を目指して是非頑張って下さい。
さてさて、今回の『短歌書いたん会』、各賞の発表をしたいと思います。勿論ここでは紹介しきれない、まだまだ大好きな唄は沢山あるんです。 *各賞には副賞としてボーナスタネーが付き+○タネーと表示されます。
いつもより賞 『いつもより 眠い陽だまり 本の上 同じ言葉が 行ったり来たり』 …カラマリ+3タネー 『いつもより 吐く息白く 遠くまで 雲に混じって 曇り空』 …愛子+3タネー
ヤマグッティー賞 『いつもより 君に寄りし 学習机 卒業までに 想いよとどけ』 …キムチィ+3タネー 『いつもより 綺麗になった ガラス窓 夜空覗けば あら満月よ』 …ことり+3タネー
モーニング賞 『いつもより 淡い笑顔で 恥じ入って 今年も宜しく 貴方との朝』 …なつ+2タネー 『いつもより はやる心に 冬晴れの 身に凍む寒さ 風切りてゆく』 …ヒロ姉+2タネー
ナイト賞 『いつもより 寒さに震う 赤ちょうちん 月のあかりに 照りて誘えり』 …鳥肌タツゴロウ+2タネー 『いつもより 煌煌光る 星星の 隙間を覗く 照れ屋の月よ』 …シャボン玉+2タネー
新春しゃんそん賞 『いつもより 池の氷が厚く張り 乗れそうでもあり 割れそうでもあり』 …NEGI+3タネー
おぉ、色気賞 『いつもより 人肌恋しい 冬の夜 月見上げれば あなたを想ふ』 …まゆみ+2タネー
日々鍛錬賞 『いつもより 伊賀の忍びに 憧れて 二年通った 忍者学園』 …がし+2タネー 『いつもより 長い日めくり 冬暦 身体鍛えて 老後を思う』 …さりい+2タネー
オツキサマといっ賞 『いつもより じっと眺めたお月さん 君は変わらず 僕はがんばる』 …ココナッツボーイズ+2タネー 『いつもより 静かな夜の 帰り道 空ぶら下がる オレンジの皮』 …カラマリ+2タネー
唄い人賞(たくさん唄っ種賞) 1位:ヒロ姉 …9首+3タネー 2位:カラマリ ことり …8首+2タネー 3位:ココナッツボーイズ よーこ キムチィ NEGI …5首+1タネー
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